― 第一話を書いてみる ―
これまでこのブログでは、AIをアシスタントにしながら物語を作る過程を紹介してきました。
・キャラクターを決める
・設定を少しずつ追加する
・短編プロットを組み立てる
そして今回は、いよいよそのプロットをもとに
実際の物語のシーンを書いてみる回です。
といっても、いきなり長編を書く必要はありません。
まずは物語の入口となる「最初の出会い」だけ。
・喧嘩慣れした盗賊の少年 レイ
・泣き虫でお坊ちゃん気質の亡国の王子 ユリウス
荒廃した世界の中で、
この正反対の二人がどう出会うのか。
AIに第一話の冒頭シーンを提案してもらいました。
◇ 出会い —— 奴隷集団の中で号泣する王子
鉄輪の軋む音が荒野に響く。
奴隷を満載した檻車の中で、ひときわうるさい声があった。
「ひぃぃぃ……っ、砂が目に入ったよぉぉぉ……!」
さわやかな緑髪の少年が、両目を押さえて泣き喚いていた。
「……お前、砂でそこまで泣くか普通」
隣で鎖に繋がれたレイは、呆れた顔で少年を見た。
自分も盗みの失敗で奴隷に落とされた身だが、この“お坊ちゃん”は次元が違う。
「うぅぅ……だって……目が……しみるんだもん……っ」
「わかった! わかったから落ち着け! ほら、水……え、もう半分こぼしてんじゃねえか!!」
ユリウスと名乗る少年は、ずっとこんな調子だった。
泣く。こぼす。謝る。
また泣く。
レイは思った。
(情けねぇヤツ……)
そして、知らぬ未来に震えていた。
(もしこいつと組まされたら、俺まで死ぬ……)
だがその“最悪”は、すぐに訪れることになる。
◇ 世話係 —— 肉体労働の絶望
荒野の作業場。奴隷たちは大岩を運び、道を整える重労働を課されていた。
「ユリウス、そっちのロープしっかり——」
「ひゃああああっ!? 手、すべっ……!」
ズルッ。
ドシャアアアアア!!!
岩が転げ落ち、レイの足元すれすれで止まる。
「てめえ殺す気かぁ!!?」
「ごっ、ごめんっ……ごめんねレイぃぃぃ……っ!」
また泣いた。
次の日はバケツの水をこぼし、
その次は崖下に工具を落とし、
そのまた次の日は何もしていないのに倒れた。
レイは看守から怒鳴られながらも、心の底で思っていた。
(なんで俺、こんなガキの世話係みたいになってんだ……)
しかし、あの日までは——。
◇ 転機 —— レイを庇った、震える王子
「クソガキ、またサボったな!」
鞭がレイの背中を裂いた。
「ちっ……痛ぇなおい!」
いつものことだ。レイは気にしない。
むしろ、反撃しようとしていた。
だが。
「や、やめてっ!!」
ユリウスが、泣きながら飛び出してきた。
自分の細い身体で、レイを庇うように立ちふさがる。
「レ、レイを……これ以上は……ひぃっ……叩かないで……!」
奴隷商人たちは一瞬ぽかんとした。
「なんだこいつ……泣きながら庇ってんの?」
「ハハッ、気味悪ぃ」
だが、あまりの必死さに興ざめし、鞭は下ろされた。
レイは呆然とユリウスを見る。
「……なんでだよ。お前殴られんの嫌いだろ」
「レイが……痛そうだった、から……」
その涙は、いつもの泣き虫のものと違っていた。
レイはその瞬間、悟った。
(ああ……こいつ、本気で俺を心配してんだ……)
胸の奥がきゅっと締まった。
◇ シリアス —— 夜の逃亡と“蛇の舌”
その夜。
奴隷商の陣は珍しく警備が薄く、絶好の逃亡チャンスが訪れた。
レイは縄をほどき、ユリウスを引き連れて闇へ走る。
「こ、怖い……追っ手が……来るよ……!」
「泣くな! 黙って走れ!」
だが、その時だった。
ガサッ——。
草陰から現れた複数の奴隷商人。それも武器持ちだ。
「ガキ共、逃げられると思ったか」
ユリウスは激しく震え、目を見開いた。
「ひっ……いやだ……!」
レイは叫ぶ。
「走れユリウス! 俺が——」
その瞬間。
ユリウスの口元から、
“二股に分かれた舌”がチロ……と伸びた。
レイ「ぎゃあああああああああ!!!?!?!!」
ユリウス「ひ、ひぃぃ……ごめん……! 怖すぎて……!」
蛇の舌だ。
完全な“蛇人”のそれ。
だが、その舌が震えるたび、
周囲の気配を敏感に察知しているのが分かった。
ユリウス「……あそこ! 右後方から三人! 湿った土の匂い……たぶん重装備……!」
レイ「分析精度たっけぇ!!?」
蛇人の一族の能力が発現したのだ。
恐怖の発作なのかもしれない。
しかし、それは逃亡において絶大な力になった。
ユリウスは涙と鼻水でぐしゃぐしゃになりながらも、
驚くほど正確に追手の位置を読み、
レイはそれに従い全速力で闇を切り裂く。
二人は、とうとう奴隷商の支配圏を抜け出した。
◇ 真実 —— 王子の告白
夜明け前、森の奥で肩を並べて座る。
レイはまだ震えていた。
「……お前、普通の人間じゃねぇのか……」
ユリウスはうつむき、少しだけ舌がチロっと出る。
「うっ……ごめん……ぼく、蛇人の一族の末裔で……
国が襲われたとき、ひとりだけ逃げて……
う、うう……みんなを守れなかった……王子なのに……っ」
レイは静かに聞いていた。
「……身分とか関係ねえよ。
俺がお前を助けたいって思ったのは……泣き虫でも、弱くても……お前だからだ」
ユリウスは涙をぽろぽろこぼす。
レイは照れくさそうにそっぽを向いた。
「それに、お前がいなかったら今ごろ俺、捕まってたしな。
……舌は怖いけど」
ユリウス「ひっぐ……レイ……ありがとう……!」
レイ「ほら泣くなっての……」
◇ ラストギャグ —— 最後に最大の恐怖が
朝日が差し込む。
「さて、これからどうすっか」
レイが立ち上がった瞬間——。
ユリウスの背後で、草むらがもぞりと動いた。
“にょろり”
レイ「うぎゃあああああああああ!!!?!?
へ、蛇ァァァ!!!!!?」
ユリウス「えっ? あ……ぼ、ぼくの……お友だちかも……」
レイ「友だち呼ぶなああああああ!!!」
森に悲鳴が響き渡り、鳥が一斉に飛び立つ。
泣き虫と蛇嫌いの逃亡劇は、まだ始まったばかりだった——。
書いてみて分かったこと
実際にシーンを書いてみると、
プロットのときには見えなかったものが見えてきます。
例えば今回なら
・レイのぶっきらぼうなやさしさ
・ユリウスのいざという時の信念
こうしたキャラクターの空気は、
文章にして初めてはっきりしてきました。
AIをアシスタントにする場合、
「全部やってもらう」のではなく、
・設定を整理する
・展開のアイデアを出す
・行き詰まったときに相談する
そんな物語作りの相棒のような使い方が、
初心者にはちょうどいい気がしています。
次回は、この第一話の骨子をもとに
より二人らしさが際立つように、細部を調整してみようと思います。
泣き虫王子と、蛇嫌いの盗賊。
意外と面白そうなコンビの物語が、ここから始まります。